BtoBマーケの相談を受けていて、ずっと違和感を持っていることがあります。「決裁者に刺さるピッチを作れば受注に近づく」というメソッドが、いまも当たり前のように使われていることです。半分は正しい。でも半分は、まったく事業の実態を見ていません。
表層の決裁者だけを撫でる施策は、もう効かない
たしかに、最終的にハンコを押すのは決裁者です。でも、その手前で「どの選択肢が机に乗るか」「どの提案が真剣に検討されるか」を絞っているのは、決裁者ではありません。現場で実際に事業を回している、別のレイヤーの人たちです。
BtoBの稟議書は、現場担当者の手で起案され、ミドルが磨き、決裁者が承認します。決裁者の前に出る情報は、その時点ですでに「現場が選んだ選択肢」に絞られている。つまり、決裁者向けに最適化したピッチは、最終チェックポイントに届く頃には、もう手遅れなのです。
「決裁者の決裁者」がいる
私たちはこの構造を、「決裁者の決裁者」と呼んでいます。表面上は決裁権を持たないけれど、実質的に何を採用するかを握っている人たち。ベテランの実務担当、長期勤続のミドル、現場のキーパーソン。多くの場合、社長の決裁よりも、この層の「これでいきましょう」のひと言が、案件の方向を決めています。
この層は、派手なコンセプトピッチには動きません。彼ら彼女らが見ているのは、もっと具体的な現実です。導入の手間、運用負荷、チームの納得感、顧客対応への影響、トラブル時の対処、今のメンバーで回せるかどうか。地に足のついた問いです。
戦略コンサル的な"頭でっかちな合理"だけでは届かない
大手の戦略コンサルや、海外発のメソッドを輸入してきたマーケ会社が苦戦するのは、ここです。論理的に整った戦略の絵姿は、決裁者には響く。けれど、「決裁者の決裁者」には、現場の手触りがない提案として弾かれます。「正しいけど、うちの現場では回らない」と。
天才的に切れる戦略は、一握りの大企業や、独自のカリスマがいるベンチャーには有効です。でも、日本の中小規模の事業の大半は、そういう構造で動いていません。事業を支えているのは、現場で意思決定の地盤を作っている層です。
「戦略だけを謳う」は、もうやめた
私たち ANTII は、戦略だけを納品する仕事から、意識的に離れました。理由はシンプルで、戦略だけで動く事業がほとんどないからです。
戦略を立てたあと、どの順番で、どの戦術を、どのチャネルで、どの粒度で動かすか。一度に何本同時に走らせて、どれを次の月に手仕舞いするか。担当者の手元に、明日の朝に動かせるタスクとして落ちているか。ここまで降りていって初めて、「決裁者の決裁者」に届く設計になります。
複数戦術 × AI で、人海戦術を不要にする
とはいえ、戦術を複数同時に走らせるのは、本来は重い仕事です。広告、SNS、LP改修、公式LINE、AIO(AI最適化)、PRコンテンツ。どれも単独で運用ノウハウが要ります。人数で押す代理店モデルでは、コストが膨らみすぎて中小規模の事業には合いません。
そこで ANTII は、戦術運用のオペレーション部分を、可能な限り AI で自動化・効率化しています。プロンプト設計、コンテンツ量産、KPIモニタリング、稟議資料の下書きまで。人の手が必要な意思決定と、人の手を離していい運用を、丁寧に切り分けて配置します。
結果として、少数精鋭で、戦略から戦術まで、複数を同時に動かす伴走が可能になっています。
BtoBの根を見て、設計する
派手な戦略の絵を描くことより、現場で意思決定を担っている層に届く設計を、地味に積み上げること。それが、いまの日本のBtoBに本当に必要なことだと、私たちは考えています。
もし「戦略だけ立てて、現場が動かない」「決裁者にプレゼンしたら通ったけど、案件が前に進まない」という心当たりがあれば、まずお話しさせてください。「決裁者の決裁者」に何が届いていないか、一緒に整理するところから始められます。